第1期北海道たけのこ王位戦 棋譜と所感 浅野さん×伊東さん

浅野伊東戦 2020.01.16_page-0001

1月16日土曜日、14時からたけのこ囲碁サロンと釧路の囲碁サロン尾越とをネットでつないで、北海道たけのこ王位戦の三回戦を行いました。

黒番は浅野哲也さん。もしかしたら北海道のアマチュアの中で一番強くはないのかも知れない、というくらい文句なしの強豪です。白番は小学校5年生の伊東信義さん。頑張り屋さんで、礼儀正しく、碁に対して真摯なプロ志望の少年です。
浅野さんも強いですが、伊東さんも先のワイズアカデミー杯で2勝を挙げた強者。手がよく見えているので、隙を見せるといつがぶっとやられるかわからない怖さがあります。

この日、浅野さんは慣れない東洋囲碁(タイゼムとも)での対局のため、40分ほど前にサロンに来て、練習対局をされていました。相手を務めたのは5段格の井上慶太さん。将棋のプロ棋士と同姓同名ですが、まったく関係ありません(笑)。井上さんはよく釧路新聞の囲碁コーナーに名前が登場する、元尾越先生の門下生です。現在は札幌の税理士事務所で働きながらたけのこ囲碁サロンのスタッフの一人として活躍してくれています。つまり、伊東信義さんとは兄弟弟子の関係と言えるでしょう。
ひととおり対局のやり方と検討の方法をリハーサルして、万全の態勢を整えてくださった浅野さん。予定通り14時に伊東さんがログインしてくれて、対局スタートです。

 

義行先生によると黒9は10辺りにハサミを打ちたいとのこと。

さらに黒11は写真の1に打ちたいそうです。右上の構えとの兼ね合いで、右辺が重要ということでしょうか。

浅野伊東 変化図1png

白12は意味不明で、打たない方が良いと思いますと義行先生。

黒19は写真1から3とノビましょうとのご推奨です。

ちょうどこの変化図が届いたときに浅野さんがサロンにいらしたんですが、この指摘には浅野さんも思うところがあるらしく、「やっぱり言われましたか」みたいなことを言われていました。わかっていたけど敢えて打ったということのようです。

浅野伊東 変化図2png

白20は気合いが良い一手ですが、その後白22から黒二子を取るのはつまらないので、

白22では写真1から3と打ちたいと義行先生。

これについては局後の検討でも同じことが話されていました。もともと白地だったところを少々拡張しても面白くないそうです。強い人はこういう「価値の判断」が優れていますよね。中級者にとっては共通の課題です。

浅野伊東 変化図3png

ついでに言うと、浅野さんは三々入りに白が手抜きをすることは想定していなかったようで、やっぱり受けたほうがよかったでしょうと。浅野さん自身は、次のような変化を考えていたのだそうです。概念的には義行先生の指摘と似ていると思います。

伊東 浅野 変化1

ちなみに、このへんの検討を筆者は後ろでずっと聞いていましたが、その間ずっと「浅野さんって碁がうまいなあ~」とあほみたいなことを考えていました。参考までに言うと義行先生も碁がすごくうまいです。義行先生くらい碁がうまければ、プロになってもやっていけると思いますが、いかがなものでしょうか!?

 

義行先生によると白40から42は黒を固めて白は不安定な石になるので大問題。これは局後の検討でも言われていたことで、様々なアジ消しになってしまっているようです。

写真白1のキリはどうでしょう、黒2のシチョウでもノビでも白3のオシが厳しくなります、との義行先生のご提案です。浅野さんもおおよそ同じような意見だったようです。

 

浅野伊東 変化図4png

さらにもう一つ参考図。

浅野伊東 変化図5png

こちらの図では黒三子を捨てられるかもしれません、と義行先生(左辺の三子を指すものと思われます)。

黒45からは白が苦しいと思います、ということで講評が締めくくられています。

 

この対局はダメ詰めまでしっかり打たれましたが、40目半という黒番浅野さんの圧勝でした。ついた目差ほどに両者に実力の開きがあるとは思えませんが、そこは浅野さんの一日の長。この一局は黒にうまく打ちまわされてしまったようです。ともあれ、白番の伊東さんの目標はプロ棋士になることですから、このような強豪との対局経験を積んで、しっかり実力をつけていってほしいですね。筆者も後援会の一人として応援しています。

 

ところで本局、黒番の浅野さんが60分の持ち時間中59分をきっちり使い切っているのに対し、白番の伊東さんの消費時間は15分少々。浅野さんが考えている間伊東さんも考えているわけだし、早見えの少年ではあるので、本人なりにしっかり考えたのだと思いますが、結果からみるともう少しじっくり考えてもよかったのかも知れないなと少し思いました。

 

浅野さんは準決勝に進み、次にもし勝ったら「たけのこ王」義行八段との互先対局です。今後の大会結果を注視しましょう。

北海道たけのこ王位戦 2021.01.23トーナメント表_page-0001

 

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