第1期 北海道たけのこ王位戦 棋譜と所感 道川さん対浅野さん

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さて、たけのこ王位戦も大詰め、アマチュア同士ではこれが決勝戦となる道川さんと浅野さんの一戦です。両者ともいつプロに勝ってもおかしくない文句なしの強豪ですが、公式戦での戦績は浅野さんが有利に聞き及んでおります。

これまでの対局を拝見する限り、道川さんは最新の打ち方をよく研究しており、意欲的な碁を打つという印象です。注目の1戦は、観戦者の少ない中静かに始まりました。(ほどなくして観戦者はけっこう増えましたが)

 

白26まではAI定石の変化の一つで、最近似たような形をよく見ます。

しかし、結果としてこの後の変化で黒が碁をまずくしてしまったので、白のツケには下ハネで簡明に受けるべきだったと浅野さんは局後におっしゃっていました。

黒27のシチョウアタリは少し露骨な感じで、黒1はどうでしょうかと義行先生。

義行流の革命的格言に「シチョウアタリは当たっていないところに打て!」と言うのがあります。シチョウに取った石はどうせすぐに白がポン抜くのだから、ポン抜きの厚みを消せる場所に打つのがよい、という趣旨で、Youtubeの「革命的囲碁格言講座26」の59分ごろから解説を見ることができます。

 

実はこれについても浅野さんが後日「もともとは自分も当たってないところに打ってたんだけど……」と悔恨の意を示されていました。

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白28は意欲的な一手だ、と義行先生も感嘆していました。(ですがポンヌキが良いと思います、との留保付きですが)

黒31は写真黒1なら3が良いのではないかと思いますとこれまた義行先生。

 

実はこの白28が大きなターニングポイントで、局後に浅野さんがこの手に惑わされたと述懐していました。あえて言うなら白の勝着といえるのかもしれません。予想の中になかったみたいですね。

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「白36から38は地に辛い一手!私なら普通(5の十四)にカケツギそうです。」

と義行先生の感想があります。道川さんはこの手で十分打てると確信があったようです。

先生によると黒39は白がカケツギを打たなかったので図のように打ってみたいとのことです。

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白44までとなると白28が働いているような気がします。黒47ではとりあえず写真黒1のマガリで様子を 見ましょう、と義行先生の提案がありました。

筆者などはマガリが大好きなので、もっと早く打ってしまいそうです。

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シチョウをとらず白64とはなかなか強情ですが、シチョウをポンヌキしないと言う一貫性が評価できますと義行先生の好評価。今風にいうと「いいね!」ってところでしょうか。義行先生がアマチュア指導で繰り返し言うのが「一貫性」の重要さです。その点道川さんはさすが己の道をしっかり進んでいる感じです。

 

「結果的には28と64が働きそうな局面になりました。この後も戦いが続きますが黒が苦しそうな感じです。道川さんはかなり強そうで独創的な碁を打たれますね。決勝戦は皆様に楽しんで もらえるような碁を打ちたいと思っています。」

 

と、義行先生の解説は締めくくられています。

 

本局は156手をもって白番道川さんの中押勝ちとなりましたが、最後のほうは浅野さんが残り10分を切る中で長考を繰り返していたので、かなり劣勢の意識があったようです。後ろで見ていた筆者は、時間が切れるのではとハラハラし通しでした。実際、時間がもたなかったので結果中押しに終わったのですが、時間がもう少しあってもおそらく結果は変わらなかったと思われます。

 

「浅野?強いよね。序盤中盤終盤、隙がないと思うよ。」

みたいな碁を打つのが浅野さんですが(このセリフは将棋のネタですが、わかるかな……)、その浅野さんを真っ向勝負で打ち破った道川さんには見事の一言。石たちが躍動する道川さんの碁を、みんなに見せていただきました!

 

この重要な一戦を制して道川さんはいよいよ決勝戦、義行先生との互先対局まで駒を進めました。さすがにレベルの高い一戦で、観戦していた高段者の皆さんも、検討にはあまり口出ししていませんでした。むしろたまたまこの日碁会所に来られていた級位者のお客さんのほうが、聞きたいことをズバズバ聞いていたのが見ていて新鮮で、面白かったです。

聞きたいことを素直に聞けるというのは、とてもよい資質だと思います。

 

決勝戦の所感も、またアップしますのでお楽しみに。

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