第1期北海道たけのこ王位戦 棋譜と所感 伊東×渡部戦

2020.12..19伊東渡部

北海道たけのこ王位戦 2020.12.19 伊東 × 渡部 棋譜

こちらは、12月19日に打たれた伊藤信義さん対渡部春妃さんの棋譜です。

伊東信義さんは釧路在住の小学5年生。とても礼儀正しく、はっきりとものをしゃべる感じのいい少年です。囲碁サロン尾越で碁を学びながら本気でプロを目指しており、今年のワイズアカデミー杯では若手棋士や全国から選抜された強豪小学生に交じって7戦中2勝をあげています。筆者が出たら3子置いたって7戦して7敗するのは確実ですから、2勝したのは本当に立派だと思います。

 

他方の渡部春妃さんは、北海道女流アマを3連覇している女流の強豪。北海道大学囲碁部に所属している大学4年生です。実はたけのこ囲碁サロンが運営できているのは彼女の働きによるところが大きく、やる気と情熱はあっても時間がない筆者に代わって碁会所の席主(受付)を引き受けてくれ、さらに席主をしてくれる女性をもう2名見つけ出してきてくれたのが彼女です。普段は木曜日と土曜日にサロンに入ってくれています。たけのこ囲碁サロンのキーパーソンの一人です。

 

いっぽう、筆者はたけのこ囲碁サロンを運営する前から伊東信義さんの後援会に入っており、伊東さんが大会出場のため札幌に来る時には交通費のカンパをするなど、けっこうがっつり応援をしています。つまり、この対局は両者ともいわば筆者の身内でして、心情としてはどちらにも勝ってほしいところでした。ともあれ、いい対局を期待しつつ観戦に臨みました。

黒7ツケ、この狙いはよくわからないのでそのうち本人に聞いてみようと思いますが、白8では右にノビるか右下にハネるべきだったのではというのが有力説です。実戦のようにサガってしまうとケイマのシマリに肩ツキされたのと同じになってしまい。一間にシマった意味がなくなるのだそうです。言われてみれば、って感じです。観戦してる時は全然気づきませんでした。筆者もいいかげん鈍いですね。

 

黒は目外しを2か所打って発展性重視の布石なので、AIうんぬんと関係なしに黒11の三々入りは問題なのではと義行先生の指摘ですが、ただ中央志向は「私がこの布石を打ったら」という仮定なので対局当事者はそうは考えていないのかもしれない、という留保付きです。

白20は義行先生なら17の一路上に二段バネしたいとのことで、黒が切り取れば上からアタリをして様子を見るそうです。「様子を見る」ってよく聞くフレーズですけど、筆者は「様子を見る手」というものを打てたことがありません。きっと高等戦術なんでしょう。

黒21は手筋(だそう)。黒29まで黒の壁がピタッとできた様は確かに美しいです。
白30は35にスベリたい、と義行先生。

黒33は一路左にボウシが良さそう、とこれまた義行先生の言で、筆者の好きそうな手でもあります。筆者の場合、たいていそのあと失敗しますが……
白34は危険な一手で、義行先生は10の六に打ちたいそうです。

局後の検討では黒は35のコスミが疑問だったとのことで、たしかにここがコスミだったために黒は白を分断できず、33の一子が切り離されてしまいました。筆者はここの折衝は黒地が大きいので黒が2目3目くらい得したかなと思っていたんですが、当事者たちは黒が悪いと思っていたらしく、義行先生も「白44までは白が上手く立ち回られたと思います。」との感想でした。

黒37は一路左にハネて白15の四に黒15の五に切ってみてはどうか。
フリカワリになりそうだけど黒に不満はないと思うのですが、と義行先生。
白が上辺、黒が右辺、というフリカワリでしょうか。実戦よりも黒がよくなりそうな気はします。

黒45は厳しい。
しかし白48では49にアタリを打ち黒が逃げた調子で48に逃げるべきではと義行先生。
白48までの三子は取られるかもしれませんが黒49にノビられたくないそうです。

この後も難しい戦いが続きますが黒49から55とこのラインをつながれば黒が面白そうな感じですね、という義行先生の総評でした、

 

実際、このあとも難しい局面が続くんですが、黒59の打ち込みから黒77までの変化では白が得をしており、はっきり優勢だったというのが局後に観戦していた皆さんのご意見が一致するところでした。

しかし、直後の白78は不要だったんじゃないかと局後に観戦の浅野さんのご意見がありました。いろいろやってみると、確かに手抜きでも黒を取れていそうな感じはしますが、どうなんでしょうか。

 

その後優勢劣勢が入れ替わったターニングポイントがどこにあったのか、難しい碁ですが、白128は5の十にノビて頑張るべきだったと局後に検討されました。黒に薄みがあるので白を取り切れるものではなく、伊東さんも取り切れないと読んでいたから眼を奪いに行くつもりはなく、ノビにはハネて受けるつもりだったそうです。

最終的には、中央に大きな黒地ができてしまったため、この碁は黒の13目半勝ちとなりました。結果だけ見れば黒が圧勝したように見えますが、緊張感のあるいい碁だったと思います。

伊東さんはこのあと嶋さんとあたります。楽しみに待ちましょう。

 

 

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